Young person showing tablet with hand drawn colorful cityscapeコロナ禍により、わたしたちは新しい時代に突入しました。これまで、商業施設はワンストップで様々な機能、つまり買い物やレジャー、エンターテインメントを提供することでその魅力を発揮していました。

ところが、コロナ禍によって集積は3密の原因となるということで、リアル店舗や商業施設は休業や縮小営業を余儀なくされました。対面での店員とのやりとりは回避しようということで、飲食店や居酒屋ではタブレットによる注文が急激に普及し始めています。このように劇的に変化する環境において、店舗や商業施設をはじめとする集客施設をどのようにデザインし運営するか、いま再定義が迫られています。

この再定義を考えるにあたって、ジオマーケティングでは3つのキーワードに注目しています。

  1. 不確実性
  2. コネクテッド
  3. データ爆発

一見何の関係もないような3つのキーワードですが、第三次流通革命が始まった2010年以降のビジネス環境の変化を象徴するキーワードといわれています。不確実性については、ビジネスの前提としていた世界がいかに容易に変化してしまうかが今回のコロナ禍によってあらためて明らかになった形と言えるでしょう。本記事ではコネクテッドとデータ爆発を中心に解説し、リーシング業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)について考えてみたいと思います。

すべての人がスマホでつながったコネクテッドな世界

下の2枚の写真は2005年と2013年にローマ法王が選出された際のバチカンに集まった市民の様子です。

2005年にローマ法王ベネディクト16世が選ばれた時は群衆の中にわずかに携帯電話で写真をとる人がいる程度ですが、8年後の2013年のフランチェス法王が選ばれた時にはほとんどの人々の手にスマホが掲げられています。

Screen Shot 2013-03-14 at 1.34.24 PM

出典:Cult of Mac -How Apple Has Changed The World In Just 7 Years-

2007年に発売されたiPhoneによって、世界の風景はすっかり変わりました。スマホによって、これまで共有することが難しかった複雑な情報や感情を共有することができるようになったのです。

写真、ムービー、コメント、ブログなどのメディアによって、膨大な量の情報が流通するようになりました。日常の些細なことから、世界を揺るがす大事件まで、誰もが目撃者、レポーター、評論家となり、ハッシュタグをつけてつぶやけば数万人の人に影響を与えるメディアにさえなります。これまで情報の受け手であった「消費者」が「生産者(プロデューサー)」になってしまいました

コネクテッドな世界だから可能な宅配代行業ビジネス

コロナ禍の最中自宅待機、外出自粛要請によって自宅で食事をする機会が増え、宅配代行業のウーバーイーツ(Uber Eats)が注目されるようになりました。

今回のコロナ禍により宅配需要が急拡大し、ウーバーイーツの存在がファーストフード店の出店戦略に影響し始めています。これまで、自社で宅配するにはコストがかかり取り込めなかった需要が、ウーバーイーツの宅配代行業によって容易に取り込めるようになり、既存店の売上を底上げも可能となったからです。

Uber Eats

店舗はウーバーイーツのアプリを導入し、店舗登録をします。宅配員もアプリをダウンロードし、各種手続きをすませ、宅配バックを準備すれば数日でアルバイトをスタートさせることができます。

だれもがスマホでつながっているコネクテッドな世界だからこそ実装できるビジネスモデルです。スマホのアプリを導入すれば、宅配を利用する「消費者」にもなれますし、宅配する「生産者」や宅配員として「媒介者」にもなれます。

データ爆発の一端を担う「評判データ」

コネクテッドな世界は容易につながることができるようになると同時に、評価・評判がその関係性を維持してゆく上で重要な力を発揮します。ウーバーイーツでも、店舗はユーザーによって即時に評価され、その評価によって他のユーザーからも宅配を発注してもらえるようになるかが決まります。

評判データ

さらに、"フォロー"や"いいね"といった生活者のSNS上での活動を活用すれば、嗜好性や世界観といったもののつながりや関係性を表現することができます

[参考]潜在需要はSNSから可視化できる!

このような「評判」や「つながり」に関するデータはネット上に増え続けており、世の中に流通するデータが指数関数的に増加するデータ爆発の一端を担っています。自社ブランドの立地戦略・最適化を考える上でも、「評価」や「つながり」を容易に計測できる環境を味方につけない手はありません

評価・つながりを加味したGoogleのアルゴリズム

評価やつながりによる経済圏を理解するのに、Googleが提供してるローカル検索のアルゴリズムは参考になります。グーグルのローカル検索アルゴリズムでは、以下の3つの項目に基づいて検索結果の優先順位を決めているそうです。

  • 近接性 ―― 検索するユーザーの現在地からどれほど近いか?
  • 突出度 ―― その分野でどれほどの人気があるか?
  • 関連性 ―― 検索ユーザーの検索条件にどれほど一致しているか?

実際に"下北沢駅 カレーショップ"と検索してみると、検索結果として「下北沢駅の近くで」「人気のある」「カレーショップ」がリストアップされます。ちなみに、検索結果で一番先頭に表示されたのは下北沢駅から徒歩4分の"スープカレー ポニピリカ 下北沢店"でした。もっと駅から近いカレーショップもありますが、この店は利用者の評判が高く、口コミ数300以上ある人気の店です。

この考え方はブランド立地戦略・最適化にも応用することができます。それぞれのテナントの世界観の「近接性」、いいかえると似た世界観を持つテナント同志を集積させることにより、魅力度を向上させることができます。また、「突出度」を考慮して"今話題の"、"これからトレンドになるであろう"ベンチマーク候補を検討しつつ、利用者との「関連性」を評価しながら立地戦略・最適化を検討することによって、自社ブランドの出店エリアや立地の優先順位を決めることができるでしょう

商圏理解に奥行きを与える「人流データ」

データ爆発のもう一つの主役は人流データです。

人流データは人々がどのように移動したかを記録したデータで、パーソントリップデータとも言います。スマホのGPSやWiFiの基地局の利用ログから作成されます。インターネットの世界ではページ遷移や検索履歴などのユーザーの利用ログが活用されていますが、それをプライバシーに配慮しながら実際の世界にも応用した仕組みと言えます。

人流データ

従来の統計データでは捉えきれない生活者の動きを把握することができるので、これまでスナップショットとしてしか把握できなかった商圏構造に空間的・時間的な奥行きを加えることができるようになります。つまり、「どんな顧客」が「どこから」「どんなタイミング」で来館していて、それは「競合施設とどのように違っているのか」といったことの把握が可能になるということです。

このデータを利用すれば、利用者との関連性についてより深い洞察を得ることが可能となります

評判データ・人流データを活用して自社ブランドの強みを知る

不可実な世界では、自社ブランドの強みを理解し差別化することでしか生き残れません。自社ブランドの強みを理解するためには、まず既存顧客や関心を持っていただいているユーザを理解することがポイントです。なかでも評判データを活用することによって、ユーザは自分たちのブランドをどのように評価して、また使っているのか?他社ブランドとの使い分けや違いについてとても参考になる意見を拾うことができます。

さらに人流データと商圏分析になくてはならない居住者ライフスタイルデータ(Geodemo)を利用することによって、自社ブランドの店舗が強い立地環境とはどういうところか?の理解を深めることができ、自社ブランドが今後どのようなエリアに出店しながら成長してゆけばよいのか、明確にすることができます。

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